3号被保険者とは
国民年金の3号とは、「国民年金の保険料を払う必要がなく、年金を受け取る際には、払ったとみなして計算される期間、又はその人達」のことを言います。
具体的には、サラリーマンや公務員に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者です。専業主婦を想像するかもしてませんが、専業主夫でも同様です。
また、「専業」である必要はなく、130万円未満であればパートなどによる収入も認められています。
3号期間が長いAさん、どれくらい有利か? ①保険料について
今年65歳になるAさんの事例を使って見ていきましょう。
Aさんの経歴は、短大卒業後、就職はしたものの、24歳で結婚と同時に退職、以降は専業主婦として家庭を守ってきました。3歳年上の夫は、大学卒業後、65歳までずっとサラリーマンです。
年金制度で見ると、Aさんが年金の保険料を払ったのは、就職した4年間の厚生年金期間のみです。
払った保険料の総額を考えて見ましょう。当時の給料が80,000円とすると、保険料本人負担分は平均で約3.6%、4年間の合計でも14万円弱です。
退職後は、専業主婦ですが、その当時、サラリーマンの妻は国民年金への加入は任意でした。つまり加入するしないは本人の自由だったんですね。
「3号じゃないの!?」って思われた方、3号制度がスタートしたのは昭和61年4月です。任意加入のため加入しなかった期間は単なる未加入期間です。
昭和61年以降は、3号なので保険料の納付義務はありません。
つまり、Aさんが生涯で払った年金保険料は総額で14万円程度です。
3号期間が長いAさん、どれくらい有利か? ②年金額について
では、受け取る際の年金額について見ていきましょう。
年金額計算の対象となる期間は、厚生年金期間48月、国民年金期間360月(3号期間)。
Aさんは60歳から特別支給の老齢厚生年金、65歳から老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取ることができます。
60歳以降、特別支給の老齢厚生年金 49,248円
65歳以降、老歴基礎年金(振替加算含む)+老齢厚生年金 757,953円
この金額を、生涯受け取ることができます。払った保険料から考えると破格のコスパと言えます。
「夫が、私の保険料まで払ってきたから!」という声も聞こえそうですが、正確ではありません。夫が払う保険料は、報酬によって決まり、配偶者の有無は問いません。つまり、報酬が同じであれば(配偶者がいても、いなくても)、保険料は同じなんです。
1号被保険者の負担と給付
比較事例として、Aさんの同級生のBさんの場合で考えます。
Bさんは、短大卒業後、自営業の方と結婚し家業に従事しました。夫婦ともに国民年金1号被保険者です。
20歳から60歳まで40年間、国民年金に加入し、保険料を納めることになります。
国民年金保険料は20歳当時1,400円(昭和51年度/月額)から、毎年上昇し、59歳当時は15,590(平成27年度/月額)まで、合計すると相当の額になるでしょう。
40年間の保険料負担額については、Aさんを遥かに超えます。では受け取る額はどうか?
Bさんの加入期間は国民年金期間のみなので、受け取るのは65歳から老齢基礎年金のみです。
年金額は780,900円でAさんを若干超えます。しかし、この金額は40年間ひと月も欠かさず保険料を払った場合です。現実的に満額の老齢基礎年金を受け取っている人は多くありません。またBさんには振替加算は加算されません。
どちらを選択しますか? 3号 OR 2号
3号被保険者の場合、健康保険もセットで付いてきます。つまり、年金のみならず、健康保険の保険料もかかりません。やはり3号制度は有利です。
その結果、どうしても3号の範囲内で働こうという傾向に偏りがちです。そのことが、女性の働く機会の喪失、ひいては社会進出の妨げになるともいわれています。現在のように性別や年齢等を問わずの就労を求める時代には、違和感を覚えます。
平成28年10月より「短時間労働者の健康保険・厚生年金の適用拡大」が施行され、週20時間以上、月の報酬が88,000円以上の労働者には、事業所の規模によっては2号被保険者(厚生年金の被保険者)に該当するケースも出てきました。
この制度は経過的に改正され、令和4年4月以降は100人以上の事業所、令和6年10月以降は50人以上の事業所と拡大されます。
現在、3号の範囲で働いている方も、その事業所が対象となった場合、2号被保険者になるか、3号にとどまるかの選択を迫られるでしょう。
その際、もっと働いてキャリアを積みたいが、3号の優位性には代えられないとの判断になれば、正に働く機会の喪失となるでしょう。
補足
- 3号の収入要件、130万円未満については例外もあります。
- 特別支給の老齢厚生年金、老齢厚生年金の計算式では、再評価率を1.8として概算額を提示してます。再評価率とは、当時の報酬を現在価値に直すためのに用いられる数値です。
- 年金額は、物価等の影響により毎年見直しが行われます。
- 老齢年金の受給権のある配偶者が65歳に到達した時は、本人が60歳未満であっても3号ではなくなります。つまり、1号被保険者として保険料の納付が必要です。(免除申請も可能)
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